転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「ほかになにも、できることはないから」

 いたたまれなくなる――もっと、力があったら。もう少し、大人だったら。
 この国に来て、何度同じことを思ったんだろう。リヒャルトの力になりたいと願う度に、自分の無力さが恨めしくなる。
 手元に広げたノートは、真っ白のまま。集中して考えたいからと、ニイファにも離れてもらっているのに、こんなことになっているなんて。

「ヴィオラは、食卓を楽しくしてくれただろう。それだけで十分だ」
「……でも」

 自分はなんの役にも立っていないのに、リヒャルトはこんなにも優しい言葉をくれる。その言葉に甘えてしまいそうで、どうしようもなくなるのだ。

「俺は、いや、俺達は、ヴィオラのおかげで救われたんだ。なにもできないなんて、そんなことはない」
「……リヒャルト様」

 それきりふたりとも黙ってしまって、じっと庭園の花を眺めている。
 皇帝が倒れて十日が過ぎたが、延期となった婚約式をいつ執り行うかまだ決まっていない。
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