転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「ええ。産出量がそもそも少なく、国内での流通だけで終わってしまうのですわ。香りがよくて、我が国の貴族達にはたいそう好まれておりますの。殿下のお口に合えばよろしいのですけれど」

 たしかに、この茶葉の香りはよく覚えている。鼻に抜けるさわやかな香り。ヴィオラも、年に二度ほど飲む機会があった。
 流通が少ない分、ヴィオラのところに届けられるはずもなく、飲むのはザーラと同席する場に限られていたが、味がしないと感じた食事の中でもおいしかったのを覚えている。
 ヴィオラは香りを楽しみ、それからゆっくりと口をつけた。

(……これって)

 まさか、父の前でこんな愚行に出るとは思ってもいなかった。

「――リヒャルト様、ちょっといいですか。このお茶を飲んではいけません」
「なんですって? 私が毒を盛ったとでも?」
「リヒャルト様のカップ、貸してください」

 カップを受け取り、ヴィオラはそこにティースプーンを沈めた。ひと匙すくい、それをゆっくりと口の中に入れる。

(……私のカップだけだ)


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