かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
先日、猪瀬君からこんなことを言われた。

――またコンテストにエントリーするってどうですか? そうしたらまた同じピンバッジがもらえるんですよね?

――新人賞は無理だけど、ほかの賞なら……。

――花澤さんならきっとまた受賞できますよ。

猪瀬君は「名案だ」と言わんばかりに目をキラキラとさせていた。そんなふうに輝いているから悪気はないとわかっていた。けど、私が受賞するのにどれだけ苦労したか彼は知らない。本来なら「そんなこと簡単に言わないで!」と激怒してしまうところだけど、楽観的な猪瀬君の笑顔を見ていたら、怒る気力も失せてしまった。

新人賞のほかにもコンテストの最高峰といわれている最優秀賞がある。それ狙ってみるのもいいかも……なんて、一瞬考えたけれど今の私の実力じゃ到底無理だ。

それから恭子さんと他愛のない話をして電話を切ると、しんと部屋が水を打ったようになる。

とりあえず今は無心で仕事に取り組みたい。ピンバッジのことに気を取られ過ぎてはほかのことが疎かになってしまう。

よし! グラタン食べてもうひと頑張りしよう!
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