かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
長嶺さんの作ってくれたグラタンは最高に美味しかった。

まるでレストランに出てきてもおかしくない美味しさで、食べ終わった後もしばらくその至福の余韻に浸っていた。すると、玄関のドアが開かれる気配がして、ようやく長嶺さんが帰ってきた。

「なんだ、結局今日はどこにも出かけず家で仕事してたのか?」

あまり彼の私服は見ないけれど、今日のコーディネートは細身のジーンズにブイネックの黒のニットというスーツのときとは打って変わってラフな格好だった。長嶺さんはコートを椅子の背もたれにかけると、「お土産だ」と言ってケーキが入って入そうな白い箱を私に差し出した。

「お土産? なんですか?」

「開けてみればわかる」

目を瞬かせながら早速箱の中身を開けてみると、ふわりと甘くて香ばしい香りが広がった。

「わっ! 美味しそう! これ、シブーストですか?」

シブーストとはスポンジやパイ生地の上にカスタードクリームとゼラチン、イタリアンメレンゲを載せ、焦がしたカラメルで覆ったフランスのケーキで、部屋の照明に照らされて表面がキラキラと輝いていた。

「今日、渋谷にあるデパートの偵察に行ってきたんだよ。そこの営業部長に俺が来てるってバレて食事まで付き合わされた……遅くなったな」

「お疲れ様でした」

長嶺さんも私と同じ土日休みだけれど、仕事熱心で休日にも関わらずこうして他店に足を運んだりしている。
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