かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「グラタン、ごちそうさまでした。すごく美味しかったです。ちょうどデザートが欲しいなって思ってたところだったんで」

色々あれこれ悩んでいても食欲には抗えない。どうやらその辺の私の神経は図太いようだ。

「それは良かった。そのシブースト、期間限定なんだってさ。生地に林檎のコンポートを取り入れてあるんだ。季節感あるだろ?」

なるほど、これはパティスリー・ハナザワにも参考になるかもしれない。確か、あの店にはシブーストは置いてなかったはずだ。

「ありがとうございます。長嶺さんも食べますか?」

「ああ、せっかくだからいただこうかな」

棚の中から適当なお皿を選んで切り分けたシブーストを載せる。そしてフォークを添えて長嶺さんに渡すと、彼はまじまじとそれを見つめて幸せそうに顔を綻ばせた。

「いただきます」

長嶺さんに合わせて私もそれをひと口食べる。

「美味しい!」

ふんわりとした独特な触感にほんのり林檎の甘酸っぱさが絶妙だった。

「うん、うまいな」

顔を見合わせると自然と互いに笑みがこぼれる。長嶺さんと過ごす時間が不思議と心地よくて、本物の夫婦みたいな錯覚さえ覚える。私たちは仮の夫婦なのに……なぜか気持ちが矛盾してしまう。
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