かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「そういう価値のあるものが盗まれた場合、大抵行きつくところはネットオークションだったりするものだ。まさかと思って検索したら……ピンゴだったな。“Bad egg”さん。パティシエの悪い卵って意味だろ? ユーザーネームのセンスだけは悪くない」

そう言われて猪瀬君が短く息を呑む。信じがたいけれど、否定もせずにいる彼の真っ青な顔がすべてを物語っていた。

「ただ落札しても受取人に俺の名前と住所を使うわけにはいかなかったからな、それだけ部下に協力してもらった」

「あはは……あの五十万で落札した人が長嶺部長だったなんて、全然気づかなかった」

まさかの落札者に、猪瀬君から乾いた笑みがこぼれた。

ご、五十万!? う、嘘でしょ……本当に、猪瀬君がそんなこと……。

いまだに信じられない現実。それにまして沸き起こるのは怒りよりも裏切られた虚しさと悲しみだった。

「ああいうのは出品者の特定が難しい。けど、君の噂は色々聞いていてね、学費に困っているとか銀細工が得意で手先が器用で、ここにいる彼女にも気があったみたいだからな。それだけヒントがあれば君を疑う余地はある。レプリカを作るなんて君にとったら朝飯前だろ?」

「そ、それは……」

もう言い逃れできないと、猪瀬君が身じろいで言葉を濁す。
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