かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「ちょっと待ってください。じゃあ、パリのバーで出会ったとき、長嶺さんは初めから私のことを知ってたってことですよね?」

「まぁ、そうともいう」

こういうところはやっぱり長嶺さんだ。なに食わぬ顔でしれっとうそぶく。

「ちなみに、君の上司である加賀美さんはコンサルタント時代にパリで同じ研修を受けた十年来の仲なんだ。うちの会社に国際カスタマーアドバイザーコンテストで新人賞をとった期待の新人がいるって聞いたときは耳を疑った。まさか、加賀美さんの会社に君がいるなんて思わなかったからな」

なるほど、そういうことだったのね……。

確か、以前、加賀美さんは長嶺さんとは昔からの知り合いだと言っていた。ようやくここで話が繋がって、ふわふわと浮かんで型にはまらないパズルのピースが、はまるべき場所へカチッと収まったような感じがした。

「君のことがわかっていくたびに、どんどん引き寄せられてる気がした。加賀美さんから君がパリ三区にある支社でコンサルタントとして仕事をしているって聞いて、どうしたら会えるか尋ねたら、君が行きつけだというのバーの住所を教えてもらったんだ。運がよければ会えるかもと……」

長嶺さんは唇を弓型に曲げ、ほんのり恥ずかしげに顔を背ける。
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