かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「あ、ん……っ、な、長嶺さんっ」

先ほどまでアリーチェ銀座の屋上にいたはずだけど、気づけばマンションの部屋で互いに衣服を乱しながら荒く息を弾ませていた。私は部屋の壁に背中を押しつけられて、ここまでどうやってたどり着いたのかも思い出せないくらい長嶺さんの噛みつかんばかりのキスに浮かされていた。おずおず自ら舌を差し出せば、よりきつく抱きすくめられて心臓が跳ねた。長嶺さんが煩わしそうにジャケットを脱ぎ捨てると、湿ったワイシャツ越しに体温が伝わってくる。

「お互いこんな格好だと……なんだかいけないことをしているみたいだな」

最後まで私の腕に絡みついていたスーツのジャケットがフローリングにパサリと落ちると、長嶺さんは性急にブラウスのボタンを外し始めた。ブラが露わになり、じわじわと長嶺さんが体重をかけてくる。

「おっと、平気か?」

その重さに耐えきれず、背中からフローリングに倒れこみそうになるのを長嶺さんの逞しい腕に支えられる。

「あ、あのっ……んっ」

すぐ目の前に長嶺さんの寝室があるというのに、私はそのままリビングのカウチに押し倒されて、続きを急くように深く口づけられた。

心臓がいくつあっても足りない。全速力で疾走したみたいに乱れる呼吸を一旦整えようと、長嶺さんの厚い胸板を押した。真上から体重をかけてくる彼はびくともしなかったけれど、ようやく大人しく唇を離し、吐息を感じる距離で見つめ合った。
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