かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
これを身に着けているということは、彼が優秀なコンサルタントであることを意味している。素直に感想を口にすると、私が警戒していないと取ったのか話を続けた。
「今、ここの商業施設の近くにある店で仕事してるんだ。正直言うと、明日にでも潰れそうで困ってるけどね、名前、聞いてもいいかな?」
やんわりとした声音、優しい笑顔、女性に対して手慣れてている感じがして警戒しつつも、私は「花澤……芽衣、です」とたどたどしく答えた。
「花澤……? あ、もしかして二年前の新人賞の? 日本人最年少受賞者と聞いて名前だけは知ってたけど……そっか、君のことだったんだ。まさかこんなところでお目にかかれるとは……乾杯してもいいかな?」
嬉しそうに表情を明るくさせている石野さんに、私は仕方なくマティーニのグラスを持つと軽くカチンと合わせる。
「これ、僕の名刺」
高そうな革製の名刺入れから一枚抜き取ると、それを私に渡した。
――株式会社ソアラマーケティングコンサルティング 代表取締役コンサルタント 石野裕
聞いたことのないコンサルタント会社だ。会社名の下に、グラデーションのラインがアクセントで入っている。何度も会社名を頭の中で巡らせてみたけれど、私の中に思い当たる節はなかった。
「今、ここの商業施設の近くにある店で仕事してるんだ。正直言うと、明日にでも潰れそうで困ってるけどね、名前、聞いてもいいかな?」
やんわりとした声音、優しい笑顔、女性に対して手慣れてている感じがして警戒しつつも、私は「花澤……芽衣、です」とたどたどしく答えた。
「花澤……? あ、もしかして二年前の新人賞の? 日本人最年少受賞者と聞いて名前だけは知ってたけど……そっか、君のことだったんだ。まさかこんなところでお目にかかれるとは……乾杯してもいいかな?」
嬉しそうに表情を明るくさせている石野さんに、私は仕方なくマティーニのグラスを持つと軽くカチンと合わせる。
「これ、僕の名刺」
高そうな革製の名刺入れから一枚抜き取ると、それを私に渡した。
――株式会社ソアラマーケティングコンサルティング 代表取締役コンサルタント 石野裕
聞いたことのないコンサルタント会社だ。会社名の下に、グラデーションのラインがアクセントで入っている。何度も会社名を頭の中で巡らせてみたけれど、私の中に思い当たる節はなかった。