かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
まだ結婚式は挙げていないけれど、それはパリ赴任が終わってからのお楽しみにしてある。
パリへ行くことを決めたとき、冬也さんは笑って見送ってくれた。加賀美さんからは『本当によかったのか?』と心配されたけれど、遠距離新婚生活とパリ支店での奮闘ぶりを知って安心したようだ。

ほんと、この一年間忙しかったなぁ……。

冬也さんが背中を押してくれなかったら、今の私はいない。

左薬指にはめられた指輪をそっとひと撫でする。そして首元には長嶺さんからプレゼントされたペリドットのネックレス。このふたつが、どんなに辛いときでも私を励ましてくれたかわからない。

早く会いたいな……。

そんな感慨に耽っていると、バッグの中から着信が聞こえた。見なくても、それが誰かからなのかはわかっている。

「もしもし、冬也さん?」

『芽衣、お疲れ』

愛おしい人の声を聞くだけで気持ちが温かくなる。大抵、私が会いたいと思っていると電話がかかってくるから不思議だ。まるで、私の想いが海を越えて彼の胸に届いているみたいに。
海外赴任の間、夏季休暇のときに一度帰国したきりで彼には会っていない。チャットで会話することはできても、パソコンの画面の向こうじゃ抱きしめることもキスをすることもできない。だから正直寂しくて仕方がなかった。

どんなに他愛のない会話でも、それは私たちにとっては貴重な時間だ。
< 216 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop