かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
あ、長嶺さんだ。

ブラインドがあがったままの状態だったから室内の様子が窺えた。白い大きなテーブルを社員が数人囲んでいて、長嶺さんはホワイトボードの前で何かの説明をしていた。ドアが閉まっているため、何を喋っているのかはよく聞こえない。社員を見つめる真剣な眼差し、時折見せる笑顔を見ていると、なぜか彼の姿が輝いて見えて思わず目を奪われる。すると。

わっ! 目が合っちゃった!?

一瞬、長嶺さんが資料から顔をあげたとき視線がぶつかった気がして、私はくるりと勢いよく半回転した。急にドキドキと波打つ鼓動を落ち着かせて胸に手をあてる。

びっくりした。気づかれたかな……。

目が合うというのは、不思議な現象だと思う。どちらか一方が見つめているだけでは成立しない。両方が同じタイミングでお互いを見て成り立つものだ。当たり前の理屈だけど、自分の意思が届いたようで妙な気分になる。

「お客様、不在にして申し訳ございません。大変お待たせいたしました」

すると、まるでフランス人形のような目のクリクリとした色白の受付嬢が戻ってきて、私に声をかけた。

「あ、すみません、えっと……」
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