かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
パティスリー・ハナザワのコンサルタントです。なんて言えば、どうして店の従業員じゃないのに注文のケーキを?と不審がられるかもしれない。

「パティスリー・ハナザワの花澤と申します。ご予約の商品をお持ちしました」

余計なことは言わず、頑張って“決して怪しいものじゃございません”オーラを放ってみると、受付嬢は納得したみたいで笑顔になった。

「花澤様ですね、花澤……あ、もしかして、先代様とご親戚かなにかでいらっしゃいますか?」

どうやら店の名前と苗字が同じだったことに引っかかったらしく、受付嬢が首をかしげている。

「え、ええ、前オーナーの花澤翔一は私の父なんです」

それでかくかくしかじか……。と説明するのもなんだし、話も長くなりそうだ。そう思っていると、父、と聞いた受付嬢が腑に落ちたように「あぁ」と声にだした。

「そうでしたか、この度はお悔やみ申し上げます」

ちゃんと社内教育を受けているのか、私なんかよりも年下に見えるのに彼女は丁寧な言葉でそして礼儀正しい。恭しくお辞儀をされて私はぎこちない笑顔を返した。

「あの、今後ともパティスリー・ハナザワをどうぞ御贔屓によろしくお願いします」

ちゃっかり宣伝してぺこりと頭を下げると、彼女も「こちらこそ」ともう一度微笑んだ。
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