かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
――芽衣、誕生日おめでとう。ほら、父さんが作ったお前の好きな苺のケーキ、生クリームたっぷりだぞ?

――わーい! ありがとうお父さん!

――あはは、あんまり食い過ぎるなよ。

「花澤さん、お待たせしました。って、花澤さん?」

「えっ? あ、すみません、ぼーっとしちゃって」

仕事中にいけないとわかっているけど無意識に時折、父との思い出が蘇る。

様子がおかしいと気づいた猪瀬君は、怪訝そうな顔を浮かべて私の顔を覗き込んだ。

「ほんとに何でもないんです、あ、資料ありがとうございました」

今でも父のことを思い出すとつい目が潤んでしまう。仕事先で泣くなんてもってのほかだ。

もらった資料を手元に抱え、頭の中を仕事脳に切り替える。そして、キリッとビジネスモードにシフトして気を引き締める。この店の経営貢献のため、正確にそして丁寧に寸分たがわぬプロジェクトを進めていかないと……。

「ところで花澤さんの胸に着いてるそれって、確か国際カスタマーアドバイザーコンテストで新人賞を受賞するともらえるっていうピンバッジだって、恭子さんから聞きました」

「え? 恭子さんから?」

恭子さんがそのコンテストのことを知っていたなんて意外だった。彼女も今までに色んな人と出会い、中にはコンテストで賞をとったコンサルタントがいたのかもしれない。
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