かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「ラーメンが食べたいです。それもこってり系の」

「ラーメンか……」

私のリクエストが意外だったようで長嶺さんは目を丸くした後、スマホで少し検索してからにこりとする。

「今からでも空席があるみたいだな、俺のお勧めのラーメン屋があるんだが……そこでいいか? 少し歩くけど」

「はい、お願いします」

「じゃ、行くか」

長嶺さんはスマホをポケットにサッとしまうと私の手を取った。

「あ、あの……」

いきなり手を繋がれて戸惑う。

「君の手は冷たいな」

「手が冷たいのは父譲りです」

なんて冗談を言ってみる。

実際、手が温かいと生クリームを絞るときに形が微妙に崩れることがある。だからパティシエの手が冷たいのは職業病みたいなもんさ、と父が昔よく言っていた。本当は緊張して指先の熱が引いてしまっているなんて言えずに、下手な冗談で誤魔化そうとする。

彼は自分の体温を分け与えるように、ぎゅっと私の手を握り直した。

長嶺さんの手、温かいな……。
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