【短】舞散れ、冬の香り。
「私嫉妬深いからね?」
「うん」
「仕事では今まで以上に厳しくするわよ?」
「うん」
「ほんとは重いんだよ…?」
「うん」
そこまで言っても笑顔で受け止めてくれる古松くんに、私は涙がポロポロと零れていく。
「浮気したら…一生許さないんだからっ」
「うん。内海さん……加奈恵が安心して甘えられる男になるよ…そうなれるように、一生努力する」
「こまつ、くん…」
「言ったでしょ?入社当時から好きだったって。こんなに長く好きなのに、今手放すなんて…俺はそんなこと出来ないから…そこまで大人じゃないからね。欲しいものは絶対にこの手に掴む。もしも、あのままあの人と付き合ってたって…奪うつもりだったから……だから、もう…泣かないで?」
指で、そっと私の頬から涙を拭ってから、髪を一房もう一つの方の手で絡め取って、微笑む。
「泣かないで…もっと甘えて?加奈恵が笑ってくくれるように、俺はどこまでも強くなるから。もう絶対に傷付けないから」
もう、駄目だ…。
そう、思った。
私は完全に、堕ちてしまった。
彼という甘い罠に負けてしまった。
それなのに…どうしてこんなにも幸せなのだろう?
どうしてこんなにも、悔しいなんて思わずにいられるんだろう…?
「ねぇ?何回好きだって言えば、加奈恵は俺に笑い掛けてくれる?何回愛してるって言えば、俺のこと頼ってくれる?」
「ばか…そんなのもう…分かってるくせに」
「うん…でも、加奈恵の口から…聞きたいんだ」
「す…き…」
「ん。ありがとう…俺も好きだよ…一生離さないから」
私の心は、満たされて温かくなっていく。
こんな幸福感を、今まで味わったことがあっただろうか。
私は、ポロポロ零れていく涙をなんとか止めて、彼の胸元に頰を寄せると、もう一度小声で囁いた。
「好き」
だと…。