【短】舞散れ、冬の香り。
「古松くん、あのねぇ。ほんとにそういうのやめてくれないかな?非常に腹が立つから」
頼ってしまえたのなら、何もここまで苦しむことはないはず。
だけど…。
「俺さ、内海さんのそういう所、尊敬してるから」
と、微笑まれると…何故だかひどく気持ちが荒ぶってしまうんだ。
大体、元々の接点なんてありゃしない、たかが同期の一人に対して、尊敬だのなんだのと、余計な感情なんかいちいち抱いていたら、同じフィールドで戦っている身として、脇が甘くなる。
じゃなくても、日本は女性を大和撫子よろしく、内に囲いたがる。
競争社会に早々容易く飛び込まれて、頭の堅い意見なんかを飛び越えた、柔軟性のある斬新なアイディアを持ってして、ディスカッションなんぞをされたら、一気に劣勢になって自分が負け組に落ちていくことを、誰もが恐れそこばかりに固執しているんだ。
そういう同期の男性社員の、子供のようないただけないイジメにも打ち勝ち、私は今の位置を築き上げてきた。
そんな私が、足の引き摺り合いになるような、色恋沙汰を、社内で起こすはずがないだろう。
それを、案外身近で見て来たであろう、彼がそういうことを口走るようになったのは……やはりあの夜がきっかけで。
元来、性能のいい警報装置を携えている私は、彼に対して、どう行動を起こせば、自分が傷付かないよう、危険回避出来るか…頭を悩ませていた。