【短】舞散れ、冬の香り。
『加奈恵…』
『加奈恵……』
私を呼ぶ、愛しい彼の声がやけに、昔のことのように感じられるけれど、それを認めたら…それこそ完全に、私の負けだ。
いつから、腐った関係になっていたのかさえ分からないし、彼があの時言い出さなかったら、どこまで続いていたかも分からない…そんな蜘蛛の糸よりも細い、時間。
私を抱いた手で指で、彼女へと同じように愛を囁いていたのか、それともその逆だったのか…。
分からない。
分かりたくもない。
なのに…古松くんは、私の傷口を突くように、疼かせるように、近付いてきては笑い掛ける。
「内海さんは、素敵なヒトだよ」
なんて、また一つ、微笑んで。