【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「いいえ、とんでもない」
オーモンド氏は即座にかぶりを振った。
「私がお父上であるウェントワース侯爵と初めてお会いしたのは、仕事関連の場でした。侯爵は気さくな方で、平民である私にも対等に話してくださり、大変素晴らしい方でした。その侯爵から、養護施設を引き継いでくれる人を探している、と聞かされました。しかし、当時私も仕事が忙しく、それだけなら名乗り出ていませんでいた」
「では、どうして……?」
「ああ、それは……。申し訳ありません。ここの一番上の引き出しを開けていただけますか?」
言われた通り、エルシーはベッド横のチェストの引き出しを開けた。しかし数枚の白い紙が入っているだけで、特別なものは見つからない。
「それは二重底になっていましてね。そこの窪みを持ち上げてください」
エルシーは底に小さな窪みを見つけ、指を引っ掛けて上げてみた。すると、そこには小さな木箱が入っている。
それを受け取ったオーモンド氏は、中から折り畳まれた古い紙を取りだし、エルシーに差し出した。
薄茶色に変色しかけた紙をゆっくり広げると、懐かしい文字が並んでいる。忘れもしない父の筆跡だ。
それに視線を走らせたエルシーの瞳が大きく見開かれる。
「何度かお会いするうちに、侯爵は、恐れ多くも私というしがない男を高く買ってくださっていたようなのです。養護施設にいる〝声の能力者の子供たち〟のことを話してくださいました。侯爵は、世間から日陰に追いやられている子供たちを少しでも救いたい、という信念をお持ちで、私はいたく感銘を受けました。それで、引継ぎを受ける決意をした次第です」
オーモンド氏が紙の内容の補足をする。
そこには――こう記してあった。
『すべての子供たちに明るい未来を。自信を持って前を向いて歩けるように』と。
オーモンド氏は即座にかぶりを振った。
「私がお父上であるウェントワース侯爵と初めてお会いしたのは、仕事関連の場でした。侯爵は気さくな方で、平民である私にも対等に話してくださり、大変素晴らしい方でした。その侯爵から、養護施設を引き継いでくれる人を探している、と聞かされました。しかし、当時私も仕事が忙しく、それだけなら名乗り出ていませんでいた」
「では、どうして……?」
「ああ、それは……。申し訳ありません。ここの一番上の引き出しを開けていただけますか?」
言われた通り、エルシーはベッド横のチェストの引き出しを開けた。しかし数枚の白い紙が入っているだけで、特別なものは見つからない。
「それは二重底になっていましてね。そこの窪みを持ち上げてください」
エルシーは底に小さな窪みを見つけ、指を引っ掛けて上げてみた。すると、そこには小さな木箱が入っている。
それを受け取ったオーモンド氏は、中から折り畳まれた古い紙を取りだし、エルシーに差し出した。
薄茶色に変色しかけた紙をゆっくり広げると、懐かしい文字が並んでいる。忘れもしない父の筆跡だ。
それに視線を走らせたエルシーの瞳が大きく見開かれる。
「何度かお会いするうちに、侯爵は、恐れ多くも私というしがない男を高く買ってくださっていたようなのです。養護施設にいる〝声の能力者の子供たち〟のことを話してくださいました。侯爵は、世間から日陰に追いやられている子供たちを少しでも救いたい、という信念をお持ちで、私はいたく感銘を受けました。それで、引継ぎを受ける決意をした次第です」
オーモンド氏が紙の内容の補足をする。
そこには――こう記してあった。
『すべての子供たちに明るい未来を。自信を持って前を向いて歩けるように』と。