【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
ティアナ王女に拝謁する許可をもらったエルシーは、謁見室を出たあと、アーネストとともに王宮南棟の三階に向かっていた。その最も広くて陽当たりのいい部屋が、婚礼式までティアナ王女が過ごす場所だ。式がすめば、王妃の間として別の部屋に移ることになる。
王女の部屋の前には、護衛騎士がふたり立っていて、アーネストたちの訪問を中の侍女に伝える。案の定、パメラという侍女が対応に出た。
「なんでございましょう」
怪訝な表情のパメラに、アーネストが事情を伝える。すると、パメラの眉尻がみるみるうちに上がった。
「そんな、勝手な……!」
「勝手なことをしているのはどちらだ。これは陛下直々のお達しであり、逆らうことは許されない。あなたも王女殿下から引き離されたくないのなら、速やかに従っていただきたい」
やや厳しい口調でアーネストが述べると、パメラは唇を引き結び、もう何も言わなかった。
「ここからは私だけで大丈夫です。アーネスト様は職務にお戻りください」
そう伝えると、アーネストは躊躇しながらも、騎士団棟の方向へと戻っていく。
(さあ、ここからが正念場よ……!)
エルシーは心の中で自分を鼓舞すると、扉の前に立った。パメラが開けてくれたので、そっと中へ入った。
大きな窓から光が入るその部屋はとても明るく、家具や調度品も一流品で取り揃えられている。その窓際の椅子に、ゆったりとした長袖のドレスを身にまとった女性が腰掛けていた。人の気配を感じたのか、振り返った途端、その瞳が大きく見開かれる。
それはエルシーも同じだった。思わず、その女性を見つめてしまう。
(なんてキレイな人なのかしら……)
まるで月光の雫を集めて溶かしたように輝く、銀色の長い髪。何の飾りもつけず、本来の美しさのままにまっすぐ腰のあたりまで伸ばされている。肌の色は白く、整った目鼻立ち。そして、最も印象的なのは薄紫色の瞳で、淡い紫水晶を彷彿とさせる。