【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
時々、ジェラルドに命じられてアーネストも様子を窺いに部屋を訪ねてきた。部屋に入ることはなく、ドアの外でエルシーと二言三言交わしたのち、すぐに去っていく。しかし、ある時、ティアナがアーネストに入室許可を出したのだ。
いつも訪れてくれるアーネストをそのまま返すのが不憫だと思ったのかもしれない。ティアナはパメラを通じて、お茶の時間の同席を勧めてきた。だが彼は入室はしたものの、職務中であること、陛下より先に自分が同席することは許されざる行為であることを理由に、丁寧に断りを入れた。そのまま一礼して、颯爽と部屋をあとにする。
アーネストの理由は正当だ。しかし、ティアナが少し残念に思っているのではないか、とエルシーが彼女の方を見たその時。思わず表情が固まった。
ティアナが、アーネストの消えたドアをじっと見つめている。両手を前で組み合わせ、放心状態だ。
まさか。嫌な予感がエルシーを襲った。それを払拭するように、明るく声をかける。
「ティアナ様、いかがなさいましたか?」
「あ、いえ……」
ティアナはエルシーへ視線を向けると、すぐまたドアの方へと戻す。
「あまりに素敵なので、見惚れてしまいました」
普段なら聞き逃してしまいそうなほど、小さな呟き。しかし悪びれもせず放たれたその言葉は、はっきりとエルシーの耳に届いた。同時にみるみる顔が青ざめていく。
(まさか……ティアナ様はアーネスト様のことを……?)
王宮に着いた際、ティアナは夫となるジェラルドよりも先にアーネストと対面した。ジェラルドも非常に女性受けのいい容姿を持っているのだが、先にアーネストに心を奪われてしまった可能性もある。それによって、ジェラルドを避けているのだとしたら……。