【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「火傷っ……お怪我は!?」

「大丈夫です。コルセットも分厚いものをつけていますので。気になさらないでください」

 ティアナは静かに言った。その口調が、どこか余裕を帯びているようで、余計にエルシーを苛立たせた。でも、そんなことで冷静を欠いてしまう自分がもっと嫌だった。ここ数日で、少しずつティアナは心を開いてくれていたし、意地悪をされた覚えなど一度もない。慣れない環境に戸惑っているかもしれない彼女に、できることは何でもしてあげたいと思っていたのに。

「申し訳ありません。私の過失です。すぐにお召し替えを」

「い、いえ、パメラが戻ってきてからにします」

 ティアナは少し焦ったように口早に答えた。いつも着替えの際はパメラひとりに手伝わせていて、エルシーには介入させない。だが、その侍女は用事で部屋を出て行ったままで、まだ戻ってこない。

「お着替えなら私でもお手伝いできます。私も以前は侍女をしておりました。貴婦人のドレスなら、ひとりで何度も着付けした経験がございますから」

 強引だと自分でも思ったが反抗される前に、エルシーはその腕を引いた。衣装室へと連れていき、ティアナの背中の紐を解いていく。脱がせたら、すぐに近くにあるドレスを着せるつもりだ。

「や、やめてください!」

 ティアナが抵抗して身をよじる。しかしエルシーは、時たま機嫌を損ねて逃走しようとするグローリアの着付けも素早くできるほどの熟練者だった。ドレスの紐は複雑ではなく、あっけなく解けたため、中のコルセットの紐も解きながら、王女の肩に手をかけた。

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