【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
翌日。エルシーは迷ったが、いつも通り出仕することにした。ここで急に姿を見せなくなると、「裏切ったのではないか」という誤解と失望を、ティアナたちに与えかねないと思ったからだ。
エルシーはなるべく普段通りの接し方を試みたが、ティアナは以前に増して口を堅く閉ざしてしまった。正体を知られてしまった以上、これまで通りに気持ちを切り替えられないのだろう。パメラに至っては、警戒心を顔に貼付け、言葉数も少ない。そんな重い空気を吸いながらエルシーは時間をやりすごしていたが、家に帰るなり疲れがどっと押し寄せてきた。
「昨日から体調でも悪いのか?」
「いいえ、大丈夫です」
アーネストは今日も食が進まない妻を気遣った。ベッドで先に休んでいるエルシーの頭をそっと撫でてくれる。その手が温かくて、エルシーは夫に真実を語れないもどかしさと辛さで、シーツに顔をうずめた。
本当はこの国家機密級の真実を、全て打ち明けたい。少しでも楽になりたい。でも……できない。
アーネストは、エルシーの体調を考え、昨夜に続き今夜もそっとしておくことに決めたようだ。そばに横になり、背後から妻の身体を優しく抱きしめる。
「無理してまで王宮通いをすることはない。明日は休むといい」
心地よい低温がエルシーの鼓膜を揺らす。背中と回された腕から伝わる温もりが愛おしくて……でも苦しくて、エルシーはさらに自分を追い詰めてしまう。
そして、とうとうある決心をしたのだった。