【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
翌日の午後。王宮の一角、騎士団長室に詰めていたアーネストは報告書の確認を終えると、窓の外に視線を向けた。
一昨日からエルシーの様子がおかしい。食欲が落ち、顔色も明らかに悪い。久々の王宮務めで無理がたたったのではないだろうか。あの少し風変わりな王女の話し相手は、想像以上に神経をすり減らしてしまうのかもしれない。それなのに、こちらが気遣ってもエルシーは決して弱音を吐こうとしない。我慢強い性格なのは知っているが、辛い時は遠慮なく自分を頼ってほしいのに。
とにかく明日は絶対に医者に診せよう。そう思っていた時。
ドアからノック音が聞こえてきて、アーネストは振り返った。
「どうした」
「奥方様がお見えです」
案内役を頼まれたと思われる騎士の声に、アーネストは急いでドア付近に駆け寄る。開けるとその言葉の通り、エルシーが立っていた。
「お仕事中に、申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ」
アーネストは、どこか思いつめたような悲壮な面持ちのエルシーを招き入れるとソファに座らせた。自分もその向かい側の椅子に腰を下ろす。
「今日も王女殿下のもとへ行くのか? 無理する必要はないと言っておいただろう」
「はい……でも無理だとは思っておりませんから」
明らかに顔色が優れないのに、またしても妻は本音を漏らしてくれない。アーネストは少し寂しさを感じた。
「実は……アーネスト様がお出かけになったあと、お医者様に来ていただきました」
「え……あ、ああ……」
思いがけない発言に、アーネストの返事が一瞬遅れた。やはりエルシー自身も気になっていたのだ。早めの行動に出てくれて、本当によかった。
「それで、医者はなんと?」
「……妊娠の兆候は見られない、とのことでした」
「……ん?」
さらに予想だにしていなかった回答に、アーネストは思わず首をひねった。