【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
『わあ、すごくキレイ! 風がお空に連れていってくれた!』

 魔力とは、偉大な力であるのと同時に、一方では武器となり恐れられる力。そう認識していたアーネストに、エルシーの純粋な喜びはとても新鮮に感じられた。

 そのあとも、ウェントワース家を訪れる機会があった。やはりエルシーはひとりでいると誰かと話している。アーネストにも次第にそれが何か、わかるようになったが、本人や周囲に尋ねることはできなかった。しかし、これまで聞き及んでいた雰囲気とは全く違うことに、彼も驚いていた。

 あれは邪悪な力などではない。むしろ、純真で尊いものだ。世間から疎まれる力だとしても、自分だけは既成観念に囚われることなく、この小さな少女の持つ不思議な力を認めよう。

 声をかけようとしたものの、アーネストは小さい子供とどう接したらいいか分からなかった。エルシーの目にも八歳上の少年はとても大きく映っていたに違いない。ふたりが言葉を交わすことはなく、アーネストは騎士学校に戻った。その年の冬に祖父が亡くなり、同時にウェントワース家とのつながりも途絶え、アーネストも訓練と演習の日々に追われる中、エルシーのことは頭の中から消えていった。

 
 それから歳月は流れ、今から約一年前。エルシーという名の女性が王女つきの侍女をしているという話を小耳に挟んだ。その時、久々にその名を思い出したアーネストだったが、侯爵家の令嬢なら既に結婚しているはずだと、大して気にも止めていなかった。

しかし、王宮でグローリア王女とすれ違った時、金髪で緑色の瞳をした若い侍女が付き従っていた。面影はあまりないが、外見的な特徴は一致する。それがあのエルシー本人だと、アーネストはその後の調べで知った。
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