【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍

 なぜこんな所で王宮勤めを、という疑問はすぐに解消された。調べてみると、父親が作った借金が原因だとわかった。

 その頃、アーネストは国王ジェラルドからのお節介に悩まされていた。時々昼間の茶会に呼び出されては、さりげなく名家の令嬢を紹介される。そろそろ君も身を固めてはどうかな、という国王の思惑に対し、アーネストは礼節を欠かさない程度でかわし続けてきたのだが、数回目になったところではっきりと申し上げることにした。

『陛下のお気持ちは大変ありがたいのですが、自分には心に決めた女性がいます』

 もちろん、その場しのぎの嘘だ。しかし、それで引き下がるジェラルドではないことも知っている。なので、本当に婚約者を探すことにした。かといってこれまで避けてきた社交界に顔を出せば、いよいよセルウィン公爵が本格的に花嫁探しを始めたと、噂されるのも群がられるのも面倒だ。

 そこで、真っ先に頭に浮かんだのはエルシーだ。初対面ではないし、何しろ彼女の家の事情も踏まえれば、断られる可能性は低い。そう考えて早速求婚し、急な話でエルシーも戸惑っているのはわかったが、反応は悪くなかった。だが、その数日後、アーネストは彼女をひどく怒らせてしまったのである。

 その時、彼はエルシーの本当の姿を見た。同時に、自分の浅はかな考えで彼女に求婚したことを後悔した。彼女は、没落の危機に直面しても、自分の力で何とか家族を守り続け、懸命に生きてきた。

 誇りと尊厳を失わず、凛と前を向いている。それがエルシー・ウェントワースという女性だった。

 アーネストは目が覚めた思いがした。そして、彼女をもっと知りたいという感情が自然と沸き上がってきた。
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