【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
エルシーはぼんやりと目を開けた。見慣れない天井。どこだったかしら、とはっきりしない頭で考えて、ようやく答えにたどり着く。
ここは王宮内の一室で、使用人棟とは違い、それなりに身分のある者が寝泊まりを許されている部屋だ。女官長に頼みこんで、急きょ用意してもらった。もとの使用人部屋で充分だったのだが、エルシーの今の身分には相応しくないらしい。
数時間前にいつも通り仕事を終え、ティアナのもとを離れてしばらく歩いていた時に目眩がした。他の侍女の手を借り、この部屋に入った途端にドッと疲れが押し寄せ、いつの間にかベッドに倒れ込んでいたらしい。
今頃、アーネストはとても怒っているだろう。一方的に別れを口にし、勝手に家を出てきた。もちろん、これが正しい行いではないことは重々承知しているが、こうでもしないとエルシーは罪悪感に胸が押し潰されそうになるのだ。
瞼を閉じれば、涙が溢れてくる。エルシーがドア方面に背を向け、上掛けを目元まで引き上げた時だった。
ドアがノックされる。返事をしたいが、喉がカラカラで上手く声が出ない。
しばらくすると、誰かが部屋に入ってきた。女官長が気遣って、身の回りの世話をする侍女でも寄こしてくれたのだろうか。
「……エルシー」
聞き慣れた低い声が、部屋に響く。その瞬間、エルシーは身体が硬直した。
紛れもなく、アーネストの声だ。おそらく帰宅していないエルシーの所在を女官長に尋ねたのだろう。