【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
ーー愛している。

淀みのない、真っ直ぐな言葉。それはエルシーの胸の中にストンと落ち、じんわりと熱が広がっていく。

どうして。

彼はこんな勝手な自分をここまで大切に思ってくれるのだろう。

離れなければと自分に言い聞かせてきたのに、そんなことを言われたら、もう気持ちが抑えきれなくなってしまう。

離れられなくなってしまう。

エルシーはどうしていいかわからず、そっと背中を丸めた。しかし、感情が涙となって現れ、すすり泣きが部屋に響き始めた。

「……エルシー……?」

それを聞いたアーネストは身を乗り出し、小さく震える肩に再び手を置いた。反射的にエルシーが身じろぎをして振り返ると、アーネストと目が合う。

「……起きていたのか……」

エルシーは小さく頷く。柄にもない“愛の告白”を聞かれていたことにアーネストは狼狽したが、彼女の瞳が涙に濡れているのに気づいた。

「……なぜ泣く?」

「それは……私には身に余るお言葉だったからです……」

エルシーは上体を起こすと、アーネストの正面に座り直した。

「昼間の発言や、家に帰らない私に怒っていらっしゃると思っていました」

「驚いたが怒ってはいない。もし怒るとしたら、君にそんなことを言わせてしまった俺自身にだ」

アーネストはエルシーの手を優しく握った。

「さっきも言ったが、ちゃんとふたりで話がしたい。とにかく帰ろう」

「ダメです……」

「なぜだ。君は俺といるのは嫌か?」

「まさか。私もアーネスト様のことをお慕いしております……」

「だったら-―」

「それ故です。あなたが苦しむ姿は見たくないんです」

その時、ドアからノック音が聞こえてきた。

エルシーはアーネストの顔をチラリと見たが、すぐに「どうぞ」と返事をした。


入ってきた人物を見て、アーネストはすぐに椅子から立ち上がると、手を胸に当てて上体を前に傾ける。

現れたのは、パメラを伴ったティアナだった。

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