【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「やはり、覚えていないか」
「……ええと、何がでしょうか」
エルシーの返答はアーネストの期待したそれではなかったようで、微かに彼は眉根を寄せる。
「小さすぎて覚えていないかもしれないが、昔、君に会ったことがある」
「えっ?」
「十年以上前の話だ。貴族間の交流は頻繁に行われていて、親に連れられて君は俺の屋敷に時々来ていた。俺もこちらには何度かお招きにあずかっている」
「そ、そうなのですか……?」
エルシーは必死に記憶の糸を手繰り寄せた。裕福だった時、確かに両親とともに貴族の屋敷に招かれたことはある。だが、一か所ではなかったので、どれがどの家なのか、今となってはその貴族の家名は思い出せず、外観や内装の記憶も曖昧だ。
「あの、申し訳ありません、はっきりと思い出せなくて。……そのあと、いろいろとあったものですから」
「そのようだな」
全てを要約したようなアーネストの短い返答に、エルシーはなんだか居たたまれなくなった。以前の我が家の栄華を知っている人物に、この落ちぶれた現状を見られるのが、ひどく情けなくて恥ずかしかった。かつて応接間に置かれていた上質な調度品はすでにない。同様に、壁や天井を飾っていた高名な絵画も煌びやかなシャンデリアも。ただ寒々とした広い空間に、ソファーセットがぽつんと置かれているだけだ。
「……我が家の内情をご存知ですのね。でも、わざわざ昔話をしに、お忙しい中お越しになったのではありませんでしょう?」
相手に弱いところを見せたくない一心で、エルシーは凛と顔を上げ、胸を張った。
そうだ、彼は一体何をしに来たのだろう。彼女には皆目見当もつかない。
すると、次にアーネストはエルシーの想像をはるかに越えることを言ってきたのだった。
「そうだ。本来ならまずお母上に話を通さなければならかったのだが、やむを得ない。エルシー・セレスト・ウェントワース。君に結婚を申し込みに来た」
「……ええと、何がでしょうか」
エルシーの返答はアーネストの期待したそれではなかったようで、微かに彼は眉根を寄せる。
「小さすぎて覚えていないかもしれないが、昔、君に会ったことがある」
「えっ?」
「十年以上前の話だ。貴族間の交流は頻繁に行われていて、親に連れられて君は俺の屋敷に時々来ていた。俺もこちらには何度かお招きにあずかっている」
「そ、そうなのですか……?」
エルシーは必死に記憶の糸を手繰り寄せた。裕福だった時、確かに両親とともに貴族の屋敷に招かれたことはある。だが、一か所ではなかったので、どれがどの家なのか、今となってはその貴族の家名は思い出せず、外観や内装の記憶も曖昧だ。
「あの、申し訳ありません、はっきりと思い出せなくて。……そのあと、いろいろとあったものですから」
「そのようだな」
全てを要約したようなアーネストの短い返答に、エルシーはなんだか居たたまれなくなった。以前の我が家の栄華を知っている人物に、この落ちぶれた現状を見られるのが、ひどく情けなくて恥ずかしかった。かつて応接間に置かれていた上質な調度品はすでにない。同様に、壁や天井を飾っていた高名な絵画も煌びやかなシャンデリアも。ただ寒々とした広い空間に、ソファーセットがぽつんと置かれているだけだ。
「……我が家の内情をご存知ですのね。でも、わざわざ昔話をしに、お忙しい中お越しになったのではありませんでしょう?」
相手に弱いところを見せたくない一心で、エルシーは凛と顔を上げ、胸を張った。
そうだ、彼は一体何をしに来たのだろう。彼女には皆目見当もつかない。
すると、次にアーネストはエルシーの想像をはるかに越えることを言ってきたのだった。
「そうだ。本来ならまずお母上に話を通さなければならかったのだが、やむを得ない。エルシー・セレスト・ウェントワース。君に結婚を申し込みに来た」