【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
出会った時はどこか頼りなげだったティアナの今の表情は晴れ晴れとしていて、紫水晶色の瞳には強い光が灯っている。エルシーは何も言えなくなり、口を閉ざした。

アーネストは黙ってティアナを見ている。「誰よりも身分が低い」と語る王女の話から、ただならぬ気配を感じ取っているのか、その視線はやや鋭い。

「騎士団長様。私が今から言うことは、きっとすぐには信じてもらえないでしょう。……パメラ、お願い」

ティアナが小さな声で背後に立つパメラを呼ぶ。その“お願い”をパメラはすぐに察知したようで、ティアナの後ろからドレスの紐を解いていく。

自分が偽物だという証拠をアーネストに見せようとしているのがわかり、エルシーは咄嗟に視線を逸らした。少年とはいえ、二度も男の肌を見るのはさすがに抵抗がある。

ティアナがドレスを脱ごうとしているのがわかったアーネストは、焦ったように肩を揺らした。しかし、肩からドレスが落ちる方が早かった。アーネストは寸前で床に片膝をつき、顔を伏せる。勝手に見せられたといえども、将来の王妃の肌を臣下が目にしたとジェラルドにわかれば、両目を潰されるが、それ以上の刑が下されるだろう。

だが、そんなアーネストの回避もむなしく、ティアナは同じようにしゃがみこみ、彼の手を取ると自分の方へと引き寄せる。

「どうか御容赦願います、王女殿下」

アーネストは下を向いたまま手を引っ込めようとするが、思いがけずティアナの力は強い。そのまま強引にピタリと胸へと当てられる。

その固い感触に、アーネストは驚いて顔を上げる。

「なっ……!?」

全てを悟った彼の頬が引きつった。
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