【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
*
翌朝、出立の前、ティアナがエルシーのもとを訪れた。
「そのままで構いません。今は動かないでください」
ティアナは立ち上がろうとするエルシーを座らせると、近くの椅子に腰を下ろした。
「怪我の状態はいかがですか?」
「お気遣いいただきまして、ありがとうございます。軽くひねったくらいですので、すぐによくなると思います。それより、ティアナ様がご無事でよろしゅうございました。こんな時に充
分なお世話ができず、申し訳ありません」
「私のことなら大丈夫です。こう見えて、自分のことは大抵こなせるのですよ」
安心させるように、ティアナは微笑んだ。しかし、その表情は次第に沈んでいく。
「私を探している最中での怪我だと聞きました。申し訳ありません。私がひとりで部屋を出なければ、あなたにこんな怪我を負わせなかったのに」
「……やはり、ご自分から出ていかれたのですか?」
「ええ。……昨晩、私を襲った者の正体を聞きましたか?」
「……はい。かつての王女派の者だったと」
「そうです。でもそれだけではないのです。彼は……私がローランザムの王位を継いだ際、王配、つまり私の将来の夫の立場に一番近い者だったのです」
「えっ」
思いがけない告白に、エルシーは息を呑む。
「正式に婚約したわけではありませんが、有力貴族出身で、私は幼い頃から彼を知っていました。あまりにも近くにいて兄のような存在で、恋愛感情はありませんでしたが、私の大切な家族でした。周囲もいつかはそうなるだろうと、見守っていたようでした。……しかし、国内で争いが起きるのを避けるため、私は王位継承権を放棄して、アシュクライン王国へ嫁ぐことを決めました。それが最善の策だと思っていた……でも彼の中では納得できるものではなかったのです」
翌朝、出立の前、ティアナがエルシーのもとを訪れた。
「そのままで構いません。今は動かないでください」
ティアナは立ち上がろうとするエルシーを座らせると、近くの椅子に腰を下ろした。
「怪我の状態はいかがですか?」
「お気遣いいただきまして、ありがとうございます。軽くひねったくらいですので、すぐによくなると思います。それより、ティアナ様がご無事でよろしゅうございました。こんな時に充
分なお世話ができず、申し訳ありません」
「私のことなら大丈夫です。こう見えて、自分のことは大抵こなせるのですよ」
安心させるように、ティアナは微笑んだ。しかし、その表情は次第に沈んでいく。
「私を探している最中での怪我だと聞きました。申し訳ありません。私がひとりで部屋を出なければ、あなたにこんな怪我を負わせなかったのに」
「……やはり、ご自分から出ていかれたのですか?」
「ええ。……昨晩、私を襲った者の正体を聞きましたか?」
「……はい。かつての王女派の者だったと」
「そうです。でもそれだけではないのです。彼は……私がローランザムの王位を継いだ際、王配、つまり私の将来の夫の立場に一番近い者だったのです」
「えっ」
思いがけない告白に、エルシーは息を呑む。
「正式に婚約したわけではありませんが、有力貴族出身で、私は幼い頃から彼を知っていました。あまりにも近くにいて兄のような存在で、恋愛感情はありませんでしたが、私の大切な家族でした。周囲もいつかはそうなるだろうと、見守っていたようでした。……しかし、国内で争いが起きるのを避けるため、私は王位継承権を放棄して、アシュクライン王国へ嫁ぐことを決めました。それが最善の策だと思っていた……でも彼の中では納得できるものではなかったのです」