【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「ティアナ様……僭越ながら申し上げてもよろしいでしょうか?」

「……なんでしょう」

「先ほどディアン様の人生を台無しにしてしまった、とおっしゃいましたが……ディアン様はそうは考えてはいないと、私は思います。命を省みず身代わりとなって来られたのは、もちろん王女様への忠誠心もあるのでしょうかれど、全ては大切な王女様のため、王女様の愛する祖国と民のためではないでしょうか」

 やや目を伏せながら、ティアナはエルシーの話を聞いている。

「ディアン様と一緒にいたのは短い間でしたけれど、ティアナ様や王家への恨みなど少しも感じませんでした。むしろ王女様を思うお姿は、とてもご立派でお美しかった。ですので、どうかティアナ様も、ご自分の身を大切になさってください。あなた様がご不幸な結末を迎えられたら、ディアン様もパメラさんもとても悲しみます。……もちろん私も」

 ティアナはゆっくりと視線を上げた。

「……不思議ですね。陛下にも同じことを言われました。私の身は、もう自分ひとりのものではないと」

「そ、そうだったのですね、申し訳ありませんっ」

 いつのまにか諭すような話し方をしてしまった自分を恥じて、エルシーは慌てて頭を下げた。しかも恐れ多くも王と同じような発言をしていたとは。

「謝らないでください。こちらこそ、不思議だなんて言ってごめんなさい。……嬉しかったんです。この国にも私の身を案じてくださる方がいらっしゃったことが」

 ティアナがわずかに微笑む。暗雲が立ち込めていたティアナの表情が少し晴れたことに、エルシーは安堵した。

 
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