【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「この場でのお返事はでき兼ねます。母とも相談してみないことには」

「もちろんだ。いい返事を期待している」

 そろそろアーネストも登城しなければならない時間だ。エルシーは彼が乗り込んだセルウィン公爵家の家紋入りの馬車を、しばらく見つめていた。




 エルシーの休暇は今日までなので、夜までには王宮に戻らなければならない。早めの夕食のあと、エルシーは母にアーネストの申し出の件を話した。母は喜んでくれたが、結論はエルシー自身に託された。

 家族と抱き合い、別れを惜しみながら王宮へと戻る。寂しさを紛らわせるために、いつもの道中なら敢えて王宮での仕事のことばかり考えるようにしているのに、この日ばかりはアーネストの顔が頭から離れなかった。


 それから、二日後の午後。
エルシーは侍女長に個別に呼ばれ、王宮の使用人出入口にルークが来ていることを知らされた。今までルークが自分を尋ねてやってくることなど一度もなく、エルシーは胸騒ぎを覚えながら、急いで駆けつけた。

「姉様!」

 姉が来るのを今か今かと待ち続けていたルークは、エルシーの顔を見た途端、大きな声を上げた。その顔には焦りの色が浮かんでいる。

「ルーク、どうしたの!?」

「母様の具合が急に悪くなったんだ」

「え、どうして?この前はお元気そうにしてらしたじゃない!」

「ロブのせいだ!」

 ルークは感情的に、屋敷の下働きの男の名を叫ぶ。

「父様からもらった宝物を……売らずに残しておいた思い出の詰まったルビーの指輪を、ロブが持ち逃げしたんだよ!母様はショックで倒れたんだ!」

「なんですって!?」

< 17 / 169 >

この作品をシェア

pagetop