【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
しかし、追い打ちをかけるように、通りがかりの馬車の車輪が道の窪みにはまり、そこに溜まっていた雨水が跳ねて、エルシーのスカートに降りかかった。
天にまで見放されてるのかもしれない、とエルシーが呆然としていると、その馬車が少し前に進んだ所で停まった。
「エルシー……?」
自分の名前が耳に届き、彼女は視線を上げる。
馬車の扉が開き、誰かが上半身を乗り出していた。その人物の顔を見た途端、エルシーの緑色の瞳が徐々に開いていく。
「アーネスト……様……?」
「どうしたんだ、この雨の中」
言葉と同時に、軍服姿のアーネストが馬車から飛び降り、駆けてきた。
「このままでは風邪を引く。早く馬車へ」
「あの、お、お母様が……」
「話は中で聞く」
「大事な物を盗られて……それで、私、お医者様を……」
先日のウェントワース家での毅然な態度からは想像もつかないほど、狼狽え悲痛な面持ちで訴えかけるエルシーの姿を見て、アーネストは瞬時にこの娘の身に何か大変なことが起こっているのを悟った。
「とにかく中へ入るんだ」
「でも、来てくれなくて――」
「ちょっと失礼する」
説明することに集中して動こうとしないエルシーの身体を横抱きにして、アーネストは馬車へ向かう。そのまま中へ押し込み座らせると、自分の上着を脱いで、彼女の肩にかけた。
「着替えなければ意味はないが、濡れたままでいるよりはいくらかはマシだろう。それで、何があった」
動揺と遠慮から、上着を返そうとするエルシーを制して、アーネストは話の先を促す。
少し落ち着きを取り戻した彼女から全てを聞いたアーネストの行動は早かった。
帰路の途中だったにも関わらず、御者に命じて行き先をセルウィン公爵家のかかりつけの医師の所に向かわせ、その医師を乗せたままウェントワース家へと向かわせた。
天にまで見放されてるのかもしれない、とエルシーが呆然としていると、その馬車が少し前に進んだ所で停まった。
「エルシー……?」
自分の名前が耳に届き、彼女は視線を上げる。
馬車の扉が開き、誰かが上半身を乗り出していた。その人物の顔を見た途端、エルシーの緑色の瞳が徐々に開いていく。
「アーネスト……様……?」
「どうしたんだ、この雨の中」
言葉と同時に、軍服姿のアーネストが馬車から飛び降り、駆けてきた。
「このままでは風邪を引く。早く馬車へ」
「あの、お、お母様が……」
「話は中で聞く」
「大事な物を盗られて……それで、私、お医者様を……」
先日のウェントワース家での毅然な態度からは想像もつかないほど、狼狽え悲痛な面持ちで訴えかけるエルシーの姿を見て、アーネストは瞬時にこの娘の身に何か大変なことが起こっているのを悟った。
「とにかく中へ入るんだ」
「でも、来てくれなくて――」
「ちょっと失礼する」
説明することに集中して動こうとしないエルシーの身体を横抱きにして、アーネストは馬車へ向かう。そのまま中へ押し込み座らせると、自分の上着を脱いで、彼女の肩にかけた。
「着替えなければ意味はないが、濡れたままでいるよりはいくらかはマシだろう。それで、何があった」
動揺と遠慮から、上着を返そうとするエルシーを制して、アーネストは話の先を促す。
少し落ち着きを取り戻した彼女から全てを聞いたアーネストの行動は早かった。
帰路の途中だったにも関わらず、御者に命じて行き先をセルウィン公爵家のかかりつけの医師の所に向かわせ、その医師を乗せたままウェントワース家へと向かわせた。