【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
やがて、馬車はオーモンド氏の邸宅へと到着した。爵位は持っていないが、広大な土地に屋敷を構えているあたり、かなりの資産家であると見てとれる。馬車の降り口近くまで出迎えに現れたのは、きちんとした身なりの二十代半ばほどの若者だった。
「わざわざこのような遠い地まで足を運んでいただきまして、ありがとうございます。ヴィンス・オーモンドです」
馬車から降りたエルシーたちも自己紹介を済ませると、さっそく応接室へ案内される。しかし、そこにヴィンスの父であるオーモンド氏らしき人物の姿はなかった。
「誠に申し上げにくい次第なのですが……父は一昨日から、再び意識が戻らなくなりまして……」
「まあ……っ」
「それまではエルシー様や婚約者様と会えるのをとても楽しみにしていたんですが……ご連絡差し上げようにも、もうすでに王都を出立なさっていると思い、どうにもできなくて」
かしこまった面持ちで頭を下げるヴィンスに、エルシーは慌てて首を左右に振る。
「そんな、どうかお顔をお上げください。それは仕方のないことですわ。それよりお父様が回復なさって、私たち家族のことを思い出してくださっただけでも光栄です。きっと今は少しお疲れになっているだけだと思います」
「そうおっしゃっていただけて、こちらとしても嬉しい限りです」
ヴィンスが再び微笑むと、エルシーもホッとして笑みをこぼす。しかし、そんな和やかな空気の中、アーネストの抑揚のない声が異質のように響いた。
「オーモンド氏のお顔を拝見しても?」
「えっ……」
「ちょ、ちょっとアーネスト様……」
ヴィンスの意表をつかれたような声と、エルシーの焦った声が重なる。
「わざわざこのような遠い地まで足を運んでいただきまして、ありがとうございます。ヴィンス・オーモンドです」
馬車から降りたエルシーたちも自己紹介を済ませると、さっそく応接室へ案内される。しかし、そこにヴィンスの父であるオーモンド氏らしき人物の姿はなかった。
「誠に申し上げにくい次第なのですが……父は一昨日から、再び意識が戻らなくなりまして……」
「まあ……っ」
「それまではエルシー様や婚約者様と会えるのをとても楽しみにしていたんですが……ご連絡差し上げようにも、もうすでに王都を出立なさっていると思い、どうにもできなくて」
かしこまった面持ちで頭を下げるヴィンスに、エルシーは慌てて首を左右に振る。
「そんな、どうかお顔をお上げください。それは仕方のないことですわ。それよりお父様が回復なさって、私たち家族のことを思い出してくださっただけでも光栄です。きっと今は少しお疲れになっているだけだと思います」
「そうおっしゃっていただけて、こちらとしても嬉しい限りです」
ヴィンスが再び微笑むと、エルシーもホッとして笑みをこぼす。しかし、そんな和やかな空気の中、アーネストの抑揚のない声が異質のように響いた。
「オーモンド氏のお顔を拝見しても?」
「えっ……」
「ちょ、ちょっとアーネスト様……」
ヴィンスの意表をつかれたような声と、エルシーの焦った声が重なる。