【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「そうですか、こちらこそ恐縮です……。あ、そうだ、よければあなた方を紹介させていただけないでしょうか?」

「私たちを……?」

「はい、今お見えになっている方々……ケレット夫妻とおっしゃる商家の方なのですが、ウェントワース侯爵様から引き継いだあの養護院に、毎年運営資金を寄付してくださっているのです。養護院をお建てになった公爵様の業績にとても感銘を受けていらっしゃる方々で、ご夫妻もそこから養女を迎えて、お育てになっています。その方も一緒にお見えです」

「他にも支援者の方がいらっしゃったんですね。それは是非お会いして、父に代わってお礼申し上げたいですわ」

 エルシーが快諾すると、ヴィンスは顔を輝かせ、先方にその旨を伝えに駆けて行った。


 
 その数分後、エルシーとアーネストはケレット夫妻と対面を果たし、皆で昼食の席に着くことになった。先ほどまで三人で食事をすることへの憂いを抱えていたエルシーにとって、彼らの登場は思いがけない救いとなった。

 食事はすぐに運ばれてきて、和やかに会食は始まった。ケレット夫妻はともに四十代前半ほど。夫婦そろって柔和な笑顔で、エルシーに会えたことを喜んでくれた。そんな彼らにエルシーもすぐに親近感を抱く。特にケレット夫人は朗らかで人当たりも良く、上手に会話を盛り立てている。エルシーは女主人のあり方を目の当たりにし、勉強するつもりで夫人の会話に聞き入っていた。

 それでも時折、アーネストの方へ視線を向けてみる。彼は振られた内容には言葉少なげに返答するものの、それ以外は黙々と料理を口に運んでいた。

(アーネスト様って、意外とゆっくり食事なさる方だったのね……それはそうね、公爵様だもの。ガツガツ食べたりはしないわよね)
< 72 / 169 >

この作品をシェア

pagetop