【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
明るく楽しい雰囲気で昼食を終えたあと、ケレット夫妻の提案で、エルシーとアーネストは養護院を訪問することになった。
ケレット一家とヴィンスの四人を乗せた馬車が先導し、セルウィン公爵家の馬車があとに続く。
三十分ほど走ったところに、目的の養護院はあった。初めて訪れるのでどんな場所かわからなかったが、建物も割りと頑丈でキレイに保たれている。
馬車が到着すると、すぐに四十人ほどの子供が建物から出てきて取り囲む。
「ほら、君たち。今日は特別なお客様をお連れしたよ。この施設の創始者であるウェントワース侯爵家の方だ。失礼のないように」
ヴィンスが声を張ると、子供たちは行儀よく挨拶をしてくれた。皆、健康的で、服装は簡素だがほつれもない。ヴィンスが上手く運営し、ケレット夫妻の支援が行き届いていることを、エルシーは実感した。
「ここの子供たちが幸せそうでよかったです。父もきっと喜んでいると思います。私からもお礼を言わせてください。皆様、本当にありがとうございます」
エルシーは、これまで支えてくれていた人たちに、改めて丁寧に頭を下げる。これで、ここにきた目的はほぼ達成されたと思っていいだろう。しかし、その場にアンナの姿がないことにエルシーは気づいた。
「あの、アンナ様は?」
「ああ、それが……馬車で待っておりますわ」
なぜか夫人は歯切れ悪く答える。やはりどこか具合でも悪いのか、とエルシーは心配したが、すぐにそうではない可能性も頭をよぎった。アンナはひとりだけ、引き取られたことに負い目を感じていて、共に育った家族とも言える仲間たちと顔を合わせづらいのではないだろうか。