【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「それよりエルシー様、今から子供たちにお菓子を配るのですけれど、このあと、どうぞ我が家にもお立ち寄りくださいませ。大したおもてなしはできませんけど、アンナが是非、手作りお菓子を振る舞いたい、と言っておりまして」

「まあ、アンナ様はお菓子が作れるんですか?」

「ええ、ここにいる間に教わったらしいですわ。とても美味しいんですよ。それに、セルウィン公爵様の騎士団でのご活躍も是非拝聴したく存じますわ」

 ちょうどその時、ケレット氏が馬車から下ろされたお菓子の入ったかごを持ってきた。

「私も手伝いま――」

「あとで行きます。エルシーは少し疲れているようなので、馬車で休ませます」

 エルシーの申し出は、アーネストの強い口調によって、かき消されてしまった。

「まあ。それは気づきませんで。どうぞゆっくりなさってくださいませ。すぐ戻ってまいりますので」

 エルシーにそう言葉をかけると、ケレット夫妻とヴィンスは建物内へと入っていった。

「ちょっと、アーネスト様、一体どういう……」

「アンナが馬車から出てきている。君を見ているようだ」

「えっ?」

 エルシーが振り返ると、アーネストの言う通り、いつの間に馬車から降りたアンナがこちらを見ている。しかし、エルシーと目が合うと、サッと馬車の陰に身を隠してしまった。

「あ、待って!」

 慌てて馬車の裏へ回ると、浮かない表情のアンナが立っていた。

「アンナ様、ご気分でも悪いのですか? お顔の色が優れないようですけれど……」

 エルシーの声掛けにもアンナは答えない。相変わらず下を向いたままだ。

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