【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
(やっぱりすぐには心を開いてくれなさそうね。こういう時は無理に詰め寄るのは良くないわ。ゆっくり相手の気持ちに合わせて……)
「さっき、エルシーをずっと見ていたな。何か言いたいことがあるんじゃないのか」
しかし、エルシーの気遣いに全く気付いていない男の声が、その場の空気を重くしてしまった。思った通り、アンナの顔が引きつる。
「ちょっと、アーネスト様!……あ、ごめんなさいね、アンナ様。いきなりびっくりさせてしまいましたよね」
「……別に……あなたを見ていたわけではありません。ちょっと空気が懐かしくなって外に出ただけです。それに、様付けも敬語もやめてください」
アンナは小さく声を絞り出すと、エルシーが引き留める間もなく、急いで馬車内へと引っ込んでしまった。
「もう、アーネスト様! いきなり核心に迫って、怖がられてしまったじゃないですか!」
エルシーは声を抑えつつも、しっかりと抗議の声を上げる。
「それの何が悪い。時間の無駄だ」
「騎士団の尋問時と同感覚でいてもらっては困ります。心の距離というものがあってですね……」
「あの娘、何か隠しているな」
「ちゃんと私の話を聞いてくださ……え?」
「初対面から様子がおかしいと、君も気づいてるだろう。あれは緊張ではない、明らかな怯えだ。俺たちに助けを求めたいならそうすればいい。だが、そうしなかった。ここには今、君と俺しかいないのに」
「それは……そうですけど」
「とりあえず、俺達も一度馬車に戻って話をしよう。一応、君は疲れていることになっている」
「私が決めたのではありませんけどね」
やや不満そうに呟くエルシーの手を取ると、アーネストは馬車へと乗り込む。
「それで、これからどうする。この旅の目的は果たしたから、このまま帰っても誰にも咎められはしないだろう。夫人の誘いを断るのもこちらの自由だ。アンナは手作りの菓子を振る舞いたいと言っていたそうだが、どうも俺たちに親しみを持っているようには見えない」
「おもてなししなさい、と夫人に言いつけられてる可能性もありますよ。でも、アンナのあの様子……。少しだけ彼女の話を聞いてあげてもいいでしょうか? この養護院の出身の子ですし、父がこの施設だけは最後まで手放そうとしなかったことから、父はここにいる子供たちをとても大事にしていたんだと思います。私もその……このまま帰ってしまったら後悔しそうで」
アーネストはエルシーの言葉に耳を傾けていたが、やがて「わかった」と頷いた。
「さっき、エルシーをずっと見ていたな。何か言いたいことがあるんじゃないのか」
しかし、エルシーの気遣いに全く気付いていない男の声が、その場の空気を重くしてしまった。思った通り、アンナの顔が引きつる。
「ちょっと、アーネスト様!……あ、ごめんなさいね、アンナ様。いきなりびっくりさせてしまいましたよね」
「……別に……あなたを見ていたわけではありません。ちょっと空気が懐かしくなって外に出ただけです。それに、様付けも敬語もやめてください」
アンナは小さく声を絞り出すと、エルシーが引き留める間もなく、急いで馬車内へと引っ込んでしまった。
「もう、アーネスト様! いきなり核心に迫って、怖がられてしまったじゃないですか!」
エルシーは声を抑えつつも、しっかりと抗議の声を上げる。
「それの何が悪い。時間の無駄だ」
「騎士団の尋問時と同感覚でいてもらっては困ります。心の距離というものがあってですね……」
「あの娘、何か隠しているな」
「ちゃんと私の話を聞いてくださ……え?」
「初対面から様子がおかしいと、君も気づいてるだろう。あれは緊張ではない、明らかな怯えだ。俺たちに助けを求めたいならそうすればいい。だが、そうしなかった。ここには今、君と俺しかいないのに」
「それは……そうですけど」
「とりあえず、俺達も一度馬車に戻って話をしよう。一応、君は疲れていることになっている」
「私が決めたのではありませんけどね」
やや不満そうに呟くエルシーの手を取ると、アーネストは馬車へと乗り込む。
「それで、これからどうする。この旅の目的は果たしたから、このまま帰っても誰にも咎められはしないだろう。夫人の誘いを断るのもこちらの自由だ。アンナは手作りの菓子を振る舞いたいと言っていたそうだが、どうも俺たちに親しみを持っているようには見えない」
「おもてなししなさい、と夫人に言いつけられてる可能性もありますよ。でも、アンナのあの様子……。少しだけ彼女の話を聞いてあげてもいいでしょうか? この養護院の出身の子ですし、父がこの施設だけは最後まで手放そうとしなかったことから、父はここにいる子供たちをとても大事にしていたんだと思います。私もその……このまま帰ってしまったら後悔しそうで」
アーネストはエルシーの言葉に耳を傾けていたが、やがて「わかった」と頷いた。