【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
 エルシーが反論しかけたところで、プッと噴き出す声が聞こえた。見ると、アンナが楽しそうに笑みを浮かべている。

「仲良しでいいなあ……私も皆に会いたくなってきちゃった」

 いかにも子供らしい呟きとともに、その表情は次第に曇っていく。エルシーは、アンナの小さな背中に手を回すと、ソファへと誘導し、一緒に並んで腰を下ろした。

 アーネストは座らず立ったまま、腕組みをしてドアに背を預けている。自分が近くにいてはアンナが話しにくいと配慮してくれたのだろう。しかし、それだけではなく部屋に近づく他の足音をさりげなく警戒し、ふたりを守ってくれてようとしていることはエルシーにも伝わっている。なんだかんだと言い合ってはいるが、アーネストには絶対的な信頼を寄せているのだ。

「よかったら、あなたの話を聞かせてくれない? ゆっくりでいいから」

 再び優しく声をかけられて、アンナはコクリと頷いた。

 
「私、会った時からエルシー様が自分と同じだとわかりました。〝声〟が教えてくれたから」

 エルシーは先ほど気づいたばかりなのだが。年齢が低いほど、声に敏感なのかもしれない。

「私の他にも、擁護施設には同じ力を持つ子が数人いました。私たちのような人間はどこに行っても爪弾きにされるだけだったから、分かり合える仲間や友達ができて、すごく嬉しかった」
 
 知らなった事実にエルシーは驚きを隠せなかった。自分と同じ能力を持つ子供が集まっていたなんて。自然と導かれでもしたのだろうか。

「でも、だんだん皆、引き取られていって、力を持つのは私だけになりました。そして私の番になりました。皆、ケレット家に引き取られていったのは聞いていたから、私もここに来たらまた皆に会えると思って、とても楽しみにしていたんです。でも……」

 アンナは膝上のドレスの布をぎゅっと握りしめる。

「ここに来たら誰もいませんでした」
< 79 / 169 >

この作品をシェア

pagetop