【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「ですが、アーネスト様。話を聞いた以上、ここにアンナを置いていくわけにはいきません」
「かといって、勝手に連れ出すこともできない」
「はい。誘拐だと思われてはかないませんから。ですので、私から夫妻に接触して、話を聞こうと思います。これは私の勘ですけれど……夫人は私がアンナと同じ力を持つことに気づいているかもしれません」
「え?」
アーネストが眉根を寄せる。
「さっき、この屋敷に入って立ち眩みがした時、夫人は心配してくださったけど……少し口角が上がっているように見えました。夫人は、ここに留まるお嬢さんの魂の気配を私が感じ取った結果だと、捉えたのかもしれません」
「だが、それなら嫌な予感がする。今度は君を手に入れようと、何らかの手段に打って出るかもしれない」
「ですから、そうなる前にきちんと話がしたいんです。私が感じた空気についても」
アーネストはすぐに賛同してくれない。でもそれは心から自分を心配してくれているからだと、エルシーにもちゃんと伝わっている。だからこそ、素直になれる。
「アーネスト様がそばにいてくださるだけで私、とても安心なんです。大丈夫ですわ」
そう言ってエルシーがにっこり微笑むと、アーネストの黒い双眸が一瞬見開かれた。しかし何を思ったか、彼はすぐに立ち上がり、身体ごと向きを変えてしまった。
「まさか……こんな奇襲を喰らうとは」
「えっ? き、奇襲!? どこから!?」
エルシーは素早く立ち上がる。
「……自覚がないのならいい。とにかく、早く事を済ませよう」
「えっ、では賛同してくださるのですね」
安堵の息を吐くエルシーに倣って、アンナもサッと立ち上がる。アンナはアーネストの広い背中を見つめたが、すぐに廊下に向かった。
「私、エルシー様が回復なさった、と夫妻に伝えてきます」
アンナは見てしまった。率直に物を言う少し取っつきにくそうなこの男が身体の向きを変える直前、その頬に少し朱が走ったのを。そして、自覚がない、と互いに言い合っているふたりは、なんだかよくわからないけどとても仲良しで気が合うんだわ、と温かい気持ちになった。
「かといって、勝手に連れ出すこともできない」
「はい。誘拐だと思われてはかないませんから。ですので、私から夫妻に接触して、話を聞こうと思います。これは私の勘ですけれど……夫人は私がアンナと同じ力を持つことに気づいているかもしれません」
「え?」
アーネストが眉根を寄せる。
「さっき、この屋敷に入って立ち眩みがした時、夫人は心配してくださったけど……少し口角が上がっているように見えました。夫人は、ここに留まるお嬢さんの魂の気配を私が感じ取った結果だと、捉えたのかもしれません」
「だが、それなら嫌な予感がする。今度は君を手に入れようと、何らかの手段に打って出るかもしれない」
「ですから、そうなる前にきちんと話がしたいんです。私が感じた空気についても」
アーネストはすぐに賛同してくれない。でもそれは心から自分を心配してくれているからだと、エルシーにもちゃんと伝わっている。だからこそ、素直になれる。
「アーネスト様がそばにいてくださるだけで私、とても安心なんです。大丈夫ですわ」
そう言ってエルシーがにっこり微笑むと、アーネストの黒い双眸が一瞬見開かれた。しかし何を思ったか、彼はすぐに立ち上がり、身体ごと向きを変えてしまった。
「まさか……こんな奇襲を喰らうとは」
「えっ? き、奇襲!? どこから!?」
エルシーは素早く立ち上がる。
「……自覚がないのならいい。とにかく、早く事を済ませよう」
「えっ、では賛同してくださるのですね」
安堵の息を吐くエルシーに倣って、アンナもサッと立ち上がる。アンナはアーネストの広い背中を見つめたが、すぐに廊下に向かった。
「私、エルシー様が回復なさった、と夫妻に伝えてきます」
アンナは見てしまった。率直に物を言う少し取っつきにくそうなこの男が身体の向きを変える直前、その頬に少し朱が走ったのを。そして、自覚がない、と互いに言い合っているふたりは、なんだかよくわからないけどとても仲良しで気が合うんだわ、と温かい気持ちになった。