【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
 まるでそれが正しい行いだと言わんばかりのヴィンスの口振りに、エルシーは何やら言い知れぬ恐怖を感じた。無意識のうちにアーネストの袖をぎゅっと掴む。

「エルシー、ヤツの言葉に、耳を貸すな。所詮は独りよがりの、歪んだ正義感を振りかざしているだけだ」

「え、ええ……」

 エルシーも気を引き締めてヴィンスを見据える。

「どう思われようと結構ですよ。忌み嫌われる能力が誰かの役に立てるなら、その子供たちも幸せでしょう」

「それのどこが幸せなの? 商品のように扱うために、各地から力を持つ子供たちを集めているんでしょう⁉」

「何をおっしゃっているんですか。父があの養護施設を引き継いだ時には、すでに、能力者である子供はもっとたくさんいたんですよ。要するに、これはエルシー様、あなたの父親が始めた〝斡旋事業〟なんですよ!」

 勝ち誇ったような歪んだ笑みを浮かべて、ヴィンスが声高に言い放つ。

(なん……ですって……?)

 エルシーは頭に激しい衝撃を受け、思いきり目を見開いた。足元がふらついて、今にも崩れそうになる。

「僕を責めるのはお門違いだと、理解していただけましたか? エルシー様、あなたは父親からその能力で疎まれたことはありませんか? あなたがその力を開花した頃から、父親はあなたをいつか手放すために、ひそかにルートを確立しようとしようとしていたのではありませんか? 由緒ある侯爵家のご令嬢が忌み嫌われる力の保有者だなんて、貴族社会ではさぞ体裁が悪いでしょうね」

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