【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「アーネスト様、今のは一体……」

 エルシーが声を発したところで、頭上から「落ちたぞ!」という男の声が聞こえてきた。

「あの塀まで進むぞ」

 アーネストはその問い答えることなく、エルシーの手を引いて駆け出す。

「あの向こうに、セルウィン公爵家の騎士たちが待っているはずだ。朝、出発前に、もし夕刻までに俺たちが戻らなければオーモンド邸の近くで待機しろ、と指示を出してきた」

「そうだったんですか……あっ!」

 エルシーの言葉の途切れる。アーネストが突然足を止め、がっくりと膝から崩れたのだ。

「アーネスト様⁉」

 慌てて傍にしゃがみ込むと、アーネストの額がうっすらと汗で滲んでいるのが見えた。珍しく少し息も上がっている。

「どうなさったのですか⁉ まさか着地時にどこか痛めて……」

 そこまで言いかけて、エルシーにふとある考えがよぎった。



(不自然なあの風……誰かが“起こした”のだとしたら……?)



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