【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
 屋敷の玄関に到着すると、しばらく待たされたあと、ようやく四十代ほどの使用人の男性が顔を出した。

「エルシー・ウェントワースです。ごめんなさい、ヴィンスさんとお話の途中だったんですけれど、ちょっと手違いで外に出てしまって。彼のところに案内していただけますか?」

「え、ええと、ちょっと今は……」

 なぜか口ごもる男性。邸内の奥からは、やはり慌ただしい人々の声が聞こえてくる。その時、
使用人頭と思われるお仕着せを身につけた白髪の男性が、通りがかり様にエルシーの姿を見つけた。

「そちらは?」

「はあ、それがヴィンス様のお客人のウェントワース様とおっしゃいまして……」

「何? ウェントワース様? ああ、もしやエルシー様でいらっしゃいますか?」

 突然名前を呼ばれ、エルシーは首を傾げる。

「ええ……そうですが」

「ああ、よかった。今、お探ししていたんですよ。ヴィンス様にお聞きしても、知らない、おっしゃるばかりで、旦那様につきっきりでしたので」

「あの、何かあったんでしょうか?」

「ええ、先ほど旦那様がお目覚めになりまして。エルシー様をお呼びなんです」

 思ってもいなかった展開に、エルシーとアーネストは顔を見合わせた。


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