君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
そう思っていると、佐倉くんと不意に目が合う。
思わずクイッと目を逸らす。
ドキッとしたんだもん!
…あ、いや、あれだよ?そんな…恋の始まりとか、そういうドキッ、ではなくて!
ある種の恐怖。
イケメン特有の目付きの鋭さがなかなかに怖いのです…。
そう思っていると、佐倉くんも立ち上がって、既に廊下に出ていた聖也と飛鳥ちゃんの後ろに立つ。
「はい、ってなわけで…ごゆっくり!」
リュックを飛鳥ちゃんに返した聖也は、ほくほく顔で教室に戻ってくる。
飛鳥ちゃんが俺に疑問の目を向けてくると同時に、後ろに急に現れた佐倉くんにビクッとする。
うん、まあ確かにビックリするよね。立つと結構身長あるもんね。180センチくらいあるのかな?
「おっ…佐倉…」
「俺は金澤の所行くわ。じゃーな」
そう言って、佐倉くんはまさかの行動を取った。
飛鳥ちゃんの頭を、ポンポンっ…?!
当の飛鳥ちゃんは、佐倉くんを見上げてポカンとしている。
「え、何…ドッキリ…?テッテレー!とか、出てくる感じ…?こわぁっ…」
立ち去る佐倉くんの後ろ姿を見送りながら、独り言程度にそう呟く飛鳥ちゃん。
佐倉くんの頭ポンポンに1番戸惑ってるのは俺だと思うんだけど…。
「うんとぉ…まあ、行こっか」
俺は飛鳥ちゃんに声をかける。
「日本史の教室でいっか…ね?」
呆然したままで、飛鳥ちゃんはそう言った。
俺は頷いて、彼女の後ろをついていく。
んー、俺の片想いは人をここまで巻き込むんだな。
それはそうと。
飛鳥ちゃんのこと、ここまで困らせるの初めてなんだけど…。