君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


「…あ、飛鳥ちゃんいた」


2人が出て行って開けっぱになっていた、前のドアから貴哉くんが入ってきた。


「貴哉くん…」

「ん?」


貴哉くんの優しい微笑みが、妙に心に沁み込んできて、安心感を与えてくる。

それが今の私にとって、良いことじゃないのは分かった。

泣いてしまいそうになる。


「この後日本史だよ。それなのに来ないから、心配で探してたんだ」

「心配に…?」

「うん」


貴哉くんは私の前の席に、背もたれを前にしてこちら向きに座る。

優しく微笑む彼の表情に、何か見透かされてるような気がして、逆に不安になる。

それでか、思わず黙っていられなくなった。


「ねえ、今日の日本史って小テストとか無いよね?」

「うん、無いと思う」


そんなこと、分かってるのに。
どうでもいいのに。


「んーと…。教室、行こっか。
貴哉くん、迎えに来てくれたんでしょ?
何でか…知らないけど」


そう、不自然じゃないように口角を上げながら言えたはずなのに。

貴哉くんはどこか切なげに見つめてくる。


「俺、だいぶ分かるようになっちゃったよ。
飛鳥ちゃんの笑顔が嘘か本当か」

「えっ…と」


妙に真剣で、落ち着いた声色に戸惑いを覚えた。


「俺の知ってるいつもの飛鳥ちゃんは、そんな無理した笑顔なんて見せない」


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