君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


そんな一瞬で分かるもの…?


「っ…気のせいだって」

「飛鳥ちゃん」

「貴哉くんの方が、疲れてるんじゃない?そういうのあるじゃん。自分以外も調子悪く見える、的な」


少し俯き気味だからか。
いけしゃあしゃあと、思ってもない言葉が出てくる。

恐ろしくスラスラと。


「だから、私は、いつも通りだよ」


よし、決まった。


「ほらほら、教室行くよ「飛鳥ちゃん!」


立ち上がる私に、こちらを見上げて強い語調で引き止めてきた。


「俺そんな、空っぽで無理した笑顔の飛鳥ちゃんなんか見たくないよ!」

「っだから…大丈夫だって」

「本当に大丈夫なら、いつもの笑顔見せてよ」

「別に何も変わらないよ、いつも通りだって」


嘘だ。

自覚するくらい、頑張って“いつも通りみたい”、を演じてる。

唇の裏を微かに噛んで目を伏せる。
余計なこと言ったら、もっと貴哉くんに勘繰られる。もう…遅いかもしれないけど。


沈黙を破ったのは貴哉くんの方だった。

彼は小さな溜め息をついた。


「相手が僕じゃなくて佐倉くんだったら、もっと頼ってくれるの?弱い所とか、見せてくれるの?」

「えっ…?」


思いもよらない言葉を投げかけられた。
つい彼に目を向けてしまった。


< 228 / 273 >

この作品をシェア

pagetop