君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
飛鳥ちゃんらしいっちゃらしいけど、ほんの5時間くらい前まで泣いてたはずなのに、すっかりいつも通りだ。
荷物をまとめて彼女は立ち上がった。
「お邪魔しました!」
「ん?えっ、1人で帰るの?」
「そんな複雑な道でもなかったし、学校まで戻ればいつも通りだし」
「ああ…まあそうだけど」
送ろうかなって思ってたのに。
「あっ、そういやこの辺、いつも使ってる駅の1個前の駅と近いかも。そっちから帰る」
「ああ…そういや飛鳥ちゃん家に行った時、俺そこで降りたよ」
おそらく、彼女が言っている駅は一緒だと思うけど。
「で、その駅行ったことあるの?」
「ないよ。1度も」
「んんっ…」
1人で地図見ながら向かうのかな。
やっぱ心配だな…。
「…俺、駅まで送るよ?何だったら家まででも」
「なんか今日の貴哉くん、私のこといっぱい甘やかしてくる」
「今日っていうか…俺はいつでも甘えてもらって構わないんだけど」
そう返すと、飛鳥ちゃんは嬉しそうに口角を上げる。
「じゃあ、家までは大丈夫だけど、駅までは送ってもらう!」
「うんっ」
「迷子になる自信が3ミリくらいあるし」
「あるんだか無いんだか」