君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
荷物を持って、小体育館をそのまま後にしようとする。
「あぁっ…飛鳥ちゃんちょっと待ってよ」
そう声をかけると、振り返って
「家庭科、遅れちゃうよ?」
と微笑んで言ってくる。
…まただ、その笑顔。
貼り付けたみたいな、不自然な笑顔。
違和感しか感じないの、俺だけかな。
もう嫌だ。
彼女達と一緒の授業の時、毎回こうやって飛鳥ちゃんは不自然な笑顔を浮かべて、俺には何もできないの。
“友達”だから、話を聞いてあげるしかできないのなら…。
飛鳥ちゃんは、立ち止まっていた俺を不思議そうな目で見てから、先に小体育館を出ていた。
「飛鳥ちゃん待って!」
小走りで彼女の元に駆け寄った。
再び立ち止まってこちらに目を向けてくれる。
「俺もう、話聞いてあげるしかできないの嫌だ…!」
「貴哉くん…?」
戸惑ったような飛鳥ちゃんの両手を、優しく握る。
言葉だけじゃなくて、この手からも想いが伝わるように…。
飛鳥ちゃんは拒絶することもなく、黙ってこちらを見つめてくる。
「俺の大切な、大好きな女の子に、そんな笑顔させたくないよ」
「えっ…」
彼女は目を見開いて驚いた。
俺も、言ってしまった。
もう後戻りはできない。
振られたらそこで終わりかもしれない。
それでも、告白するって決めたから。