君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
バスをのんびり待って、2人で乗る。大体20分で自宅最寄りの停留所に着くらしい。
あと20分。
俺が、飛鳥ちゃんといられる時間。
「さすがにもう居眠りしない?」
「さっきいっぱい居眠りした。
貴哉くんの超高級肩枕で」
「んんっ…」
なかなかドキドキしましたよー?あれ。
「いっつもあんな感じ?」
「いつも、とは?」
「他の男友達と出かけて、帰りはいつもあんな感じ?」
俺の少し不安そうな表情を見るなり、彼女はフフッと笑う。
ええっ…何が面白いって言うんだよー?
俺にとっちゃ死活問題みたいなもんなんだけどなー。
「こんな遅くまで、男友達と出かけたことないよ。だから寝落ちなんて無いよ。
仮に佐倉とかと2人で出かけて寝落ちしたとして、多分さっきみたいに肩に体重預けるなんてしない」
「…俺にしかしないって、こと?」
何故か息切れしたみたいな言い方になってしまったけれど。
「貴哉くんは、なんか落ち着く。
良い意味でも悪い意味でも」
「わ…悪い意味とは?」
「心許しすぎて、付き合ってもないのに、さっきみたいに密着しちゃうのは、悪いとは思いませんか」
「別に思わない…」
飛鳥ちゃんから触れてくれるのは嬉しいから。
…待って、サラッと問題発言してるな、俺。
「ははっ、あんまり気にしてないんならいいや」
気にしてないわけじゃないんだけど。
ドキドキしたと、何度思えば伝わるのかな…。
言わなきゃ、伝わらないよな。