ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『もう1回は、超音波検査で私の赤ちゃんの心臓の異常を見つけてくれた時。』


あの時は、わけがわからなかった
なんで私の赤ちゃんが?って


『こっちの病院の先生に・・・心臓外科医師の日詠先生・・・先生のお父さんに、”産科医師に見つけて貰ったのはラッキーだった” って言われたんです。』


そう言われた時も意味がよくわからなかった
何がラッキーなの?って

けれども、赤ちゃんが生まれた今なら
すぐに治療を受け始めた赤ちゃんを見た今なら
その意味がどういうものなのか何となくだけどわかる気がする


『先生の観察力と腕がなければ見つからなかっただろうって・・・・』

私は日詠先生に医師としての自信を取り戻して欲しくて
あの優しい微笑みを取り戻して欲しくてその一心で一生懸命にそう答えた。


「・・・・・・・・・」

電話の向こう側にいるはずの日詠先生は暫く黙ったまま。


『・・・先生・・・?日詠先生??』

「あっ、ゴメン・・・・父さんは、そんなコト言ってたんだ。」

『ええ・・・・だから、先生は私達のコトちゃんと助けてくれたんです。』

「・・・・・・・・・」


また黙ってしまった日詠先生。
その瞬間、電話の向こう側では看護師らしき人の声が慌てた様子で日詠先生の名前を呼んでいた。




「ゴメン、急患が入ったみたいだ・・・また、電話する・・・また電話するから・・・・」

彼の声も一瞬にして慌しくなった。



もっと声、聞いていたい
もっと、もっと、もっと聞いていたい

でも、彼を、日詠先生を待っている患者さんはたくさんいるから




『ハイ・・・それじゃあ、また・・・』



私は ””もっと彼と繋がっていたい” という気持ちをぐっと堪えながらそう答え、日詠先生が電話を切るのを待っていた。

けれども、通話音が切れる気配がない。



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